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アンモニウムの骨格変換

アンモニウム骨格は窒素原子上がカチオン性を帯びており、その特異な物性から生物活性分子や界面活性剤、有機分子触媒など多くの重要分子に組み込まれている。現状、アンモニウム化合物の多くは対応する3級アミンを調整し、最終段階でアルキル化を行うことで合成されている。このように合成ルートの選択肢が非常に限られていることから、構築できる構造の制限が大きく、アンモニウム骨格のもつポテンシャルを引き出しきれていない。本研究室ではこの問題を解決し、アンモニウム化合物のケミカルスペースの拡張及び、未知の機能の解明を目指す。これを達成する手段として、アンモニウム骨格の自在変換法を確立する。アンモニウム骨格を先に構築し、その後多様な構造へと誘導化することができれば、従来法とは全く異なった合成ルートを提供できる。現在は光触媒(PC)、もしくは遷移金属触媒(TM)を用いたアンモニウム骨格の変換に取り組んでいる。

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<Distonic radical project>

 ディストニックラジカルとはラジカル部位とイオン部位が結合を介して離れた位置に存在する活性種である。イオン性に起因した興味深い反応性が期待されるものの、この活性種に着目した研究は未開拓のままであった。そこで我々は、ディストニックラジカルの一種であるα-アンモニオラジカルの光触媒による新たな発生法を開発した。この手法を利用することで従来とは全く異なったルートでのアンモニウム塩合成が可能となり、さらには合成したアンモニウム化合物が耐塩性という新たな生物活性を有することを見出した。

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"Switchable quaternary ammonium transformation leading to salinity-tolerance-conferring plant biostimulants"

Takumi Kinoshita, Yota Sakakibara, Tomoko Hirano*, Kei Murakami*

ChemRxiv 2023, DOI:10.26434/chemrxiv-2023-bwm63

[Related work]

"Switchable Decarboxylation by Energy- or Electron-Transfer Photocatalysis"

Yota Sakakibara, Kenichiro Itami, and Kei Murakami*

J. Am. Chem. Soc. 2024, 146, 1554–1562. DOI:10.1021/jacs.3c11588

"Switchable Divergent Synthesis Using Photocatalysis"

Yota Sakakibara, Kei Murakami*

ACS Catal. 2022, 12, 1857–1878. DOI/10.1021/acscatal.1c05318

<Structurally new ammonium project>

 第四級アンモニウム塩は様々な重要分子に組み込まれている構造にも関わらず、その合成法は古典的な求核置換反応に依存している。そのため、未だに合成が困難なアンモニウム塩が無数に存在する。そこで我々は「アンモニウムの骨格変換」というアプローチのもと、未踏アンモニウム塩の合成法の確立に取り組んでいる。これまでに遷移金属触媒を駆使することにより、α位置換基アルケニルアンモニウム塩という新たなアンモニウム化合物群の合成法を確立している。

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"Synthesis of α-substituted alkenylammonium salts through Suzuki–Miyaura and Sonogashira coupling"

Aoi Yoshita, Yota Sakakibara, Kei Murakami*

Bull. Chem. Soc. Jpn. 2023, 96, 303–305. DOI:10.1246/bcsj.20230018

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